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仙台高等裁判所 昭和43年(く)54号 決定 1968年12月24日

少年 S・K(昭二八・一一・一五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、要するに、少年は東北少年院に送致決定を受け、現に収容されているが、持病である喘息の治療は十分ではなく、益々悪化するのみであり、また少年は二度と非行を犯さぬよう十分反省をしているので、原決定の処分は著しく不当であるというに帰する。

右のうち、少年の少年院収容後の待遇、身体の状態の点については、抗告審としては、原決定時を基準として原決定の当、不当の判断をすべきものであるから、適法な抗告理由とはなし得ず不適法のものである。

ところで、少年事件記録および少年調査記録を検討するに、少年は生来身体が虚弱で、数え年三歳時に小児喘息を患つたが、その後小学校五、六年生当時喘息のため入院したこともあり、中学校に入学してからもその治療のため欠席または早退して通院していたが、そのため学業に落ちつけず、家庭にあつても不愉快なところから、街へ出て遊び、買い食いするようになり、小使銭欲しさから、二年生当時家庭内から現金を持ち出したり、他家から現金を盗んだりしていたところ、本件は、三年生になつた昭和四三年四月中旬から同年七月○日までの間、前後一〇回にわたつて友人と共謀または単独で金品を窃取したりしたものであり、ことに最後のものは遠距離の温泉に行つて窃取したものであつて、次第に盗癖の度を深めているものと認められ、また少年の性格には、極めて依存心が強く、情緒不安定、気分易変性が認められ、他方家庭内部においては家族間の和合に欠け、保護者にも適切な保護は期待し得られず、在宅保護をもつてしては、喘息に対する継続的治療は期待し難く、非行の度を益々深めるものと認められる。以上を考慮すれば、原決定が、少年を医療少年院に送致する処分を言い渡したのは相当であつて、処分が著しく不当であるとは認められないから、抗告の理由がない。

よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 佐藤幸太郎 裁判官 阿部市郎右)

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